SIerに将来性は無い?官庁系SIerが将来性、仕事内容、現場の状況など実態を語ります【体験談】
将来、ITエンジニアを目指す方にとって、SIerへの就職や転職を考えている人もいらっしゃるでしょう。
SIerという言葉は知りつつ、興味があっても、正直、SIerが何をするのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では現在、20歳後半でフリーランスエンジニアをしている筆者が、SIerとはというところから、実際に官庁系SIerとして働いた経験を元に、特長や必要とされるスキルをわかりやすく解説をしています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
SIerとは?どんな職業なのかを紹介
SIerの「SI」はSystem Integrator(システムインテグレーション)の略でシステムを構築する企業のことを指します。
この「SI」に「~する者」という意味になる「-er」を付けてできた造語がSIerで、読み方はSIer(エスアイアー)ですね。もともとは企業から依頼を受けたシステムを構築し、導入をする人たちです。
自前でシステムをパッケージ化して販売するSIer企業もいますが、多くのSIerが企業から依頼を受注し、その企業に常駐して、開発をしていくスタイルだと思います。
開発が完了したら終わりでは勿体無いので、導入後の保守運用の管理をしている会社が多いです。また、SIerを3種類に独立系、ユーザー系、メーカー系と分けたりしていますが、企業向けのシステム構築や運用を請け負うこと変わりありませんので、ここでは多く語りません。
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SIerとしての仕事とは
IT業界外の人から見ると、SIerはパソコンに向かってプログラミングを主にしている印象があるようですが、SIerの仕事はプログラミング以外に資料作成や顧客との折衝などやることがたくさんございます。
納品物となる資料を作成したり、お客様に説明するための資料を作ったり、会議用の資料を作ったりと何かと資料作成が多い職業です。
お客様を納得させるために上手く裏で立ち回ったり、円滑にプロジェクトを回すための調整業務を行います。本来SIerがやることなのかどうかは別として、現実はこんな風に色んなことをしています。
SIerを志した理由
最初にSIerを志した理由ですが、「消去法+比較的待遇」が良かった、という理由です。
大学は文系で特に秀でたスキル、能力もなかったので、「SEは営業職や事務職よりはスキルの積み重ねがある分モチベーションが上がりやすい」「SEならスキルアップに応じて収入が上がる」
といったことを考えていたと思います。プログラミングはまったくの未経験ではありませんでしたが、
遊びで本やネットの情報を見ながら書いて動かしている程度でした。
また上記の理由ならSIerよりもWEB系企業を志すのが一般的かと思いますが、
当時はよくわかっていませんでした。
官庁系SIerの仕事内容
ここからは、官庁系SIerで働いた経験を語っていきます。
官庁系SIerの仕事内容は、官庁で使用するシステムの開発です。
ユーザーは官庁の職員、もしくは官庁のページを利用する国民です。国民が利用するシステムの例としては、国税庁のe-Taxなどがわかりやすいでしょう。
官庁用の大規模システムを開発するので、開発に携わる人数が多いという特徴があります。またシステムの規模は大きいですが、機能性が高いわけではなく、古いシステムの改修作業なども多いです。
前述の通り、私は現在20代後半ですが、数年前の20代前半~半ばくらいの頃にCOBOLでの開発案件に携わっていました。今どきCOBOLで開発しているシステムは珍しいのではないでしょうか。
ちなみに私が携わっていたシステム以外にもCOBOLが使われているシステムは複数あり、比較的新しいシステムでもC言語やJavaで開発されているものが多いです。
官庁系SIerエンジニアの1日の作業内容
官庁SIerでの具体的な作業内容は上流工程か下流工程かによって変わってきます。
ただし、作業の流れとしては完全にウォーターフォールモデルで、要件定義~テストまでのスケジュールが完全に区切られています。
そして、システムの規模が大きい分一つ一つの作業に時間が掛かり、さらに官庁ならではの資料作成業務も多いです。1ステップ書き換えるだけでもそれに付随する設計書の変更、報告資料作成などが必要です。
また、テストも非常に厳しいため、変数名を少し変えただけでも数十項目のテストをして結果報告するようなことも珍しくありません。
結果的に、1日中、官庁で細かくレビューを行う。1日中、設計書を直し、テストをする。なんてことも多い状況でした。上流工程はもちろん、下流工程でも開発時間より圧倒的に報告資料作成やテストの時間が長かったです。
ちなみに私自身はいわゆるSIerのピラミッドの中間あたりの会社にいました。そのため上流工程から下流工程までニーズに応じて動くようなポジションでした。
官庁系SIer現場の実態と必要なスキルとは
次に、官庁系SIer現場の実態をより細かく紹介します。
基本作業はマニュアル化されている
官庁系SIerは大人数での開発、かつ開発の流れは典型的なウォーターフォールモデルです。さらにシステムの機能性の高さよりも圧倒的にセキュリティシステムの完璧さが求められるという特徴があります。
メソッド一つ取っても勝手に考えて実装するようなことは許されておらず、実装したい機能ごとに使用メソッドが決められています。
新しいメソッドが必要な場合、一つのメソッドを担当者に割り振り、ささっと書いたら後は徹底的にテストを行います。
それ以外にも、作業手順、変数名の付け方、テスト項目の作り方、設計書の書き方、などなどすべてマニュアル化されており、それに従って作業を進めるイメージです。
プログラミングより業務知識が重視されている
上で説明した通り基本的な作業はマニュアル化されており、また下流工程でも他の業界に比べてプログラミングをしている時間そのものが短いです。さらに自由にコーディングするわけではなくて、既存のシステムに倣って同じようなロジックを書くだけです。
結果的にプログラミングスキルはそれほど必要ではなくて、どちらかというと現場の既存のシステムを把握することや、業務知識の方が重視されています。
元請は大手コンサルが多い
他の業界のSIerは元請が大手SIerであるケースが多いですが、官庁の場合コンサル会社が元請になり、その下に大手SIer、その下に準大手SIer、さらにその下に中小SIerと続いています。
結果的に多重請負の階層が深くなっています。SIerの多重請負構造が問題視されつつも、実態としてなかなかなくなりません。その理由として、官庁が積極的に多重請負を利用しているということもあるかもしれません。
多重請負、偽装請負で労務管理、指示系統が曖昧
官庁なので法律は明確に守っていると思われるかもしれませんが、実態としては多重請負、偽装請負が常態化しています。そのため労務管理、指示系統も曖昧です。
指示は大手SIerが中心になっているケースが多いですが、これだと業務委託契約ではなく派遣契約になってしまっています。
しかし、実際は業務委託契約なので、偽装請負です。それと同時にピラミッド構造で多重請負にもなっているので、相乗効果で法的にグレーゾーンです。SIer全体が多重請負、偽装請負をやっていますが、実は官庁の方がかなりグレーゾーンということでした。
意外と現場の定着率は良い
良くも悪くもマニュアル的で、なおかつ法的にグレーゾーンということでしたが、以外にも現場のエンジニアの定着率は良いです。数十年間同じ現場で働いているエンジニアも珍しくはありません。
他の業界のSIerと業務知識が大きく異なることや、セキュリティ的にあまり頻繁に人を入れ替えたくないといった理由があります。またスキルが特殊なのでエンジニア側の潰しが利きにくい、仕事内容を一度覚えれば、システムが大幅に変わることがない分、楽といったエンジニア側の理由もあるでしょう。
不満を言いつつも業務をこなしている人が多い
官庁系SIerの現場はいちいち細かい規則があり、バグのリスク軽減、セキュリティ強化のためとはいえ、はっきり言って無駄な作業はかなり多いです。たとえばファイル整理のためだけに連日残業が続くようなことも多々あります。
これらの作業に対してほとんどのエンジニアは不満を持っていますが、物凄く考えたり勉強しなければならないわけではなく、単純作業が苦痛とはいえそれ以外の大変さはそこまでありません。その結果、不満を言いつつも業務をこなしている人が多いです。
官庁系SIerエンジニアに向いている人とは
官庁系SIerエンジニアに向いている人は、地道な作業をコツコツ正確にできる人です。簡単に思えるかもしれませんが、想像以上に地道でコツコツしています。
上流工程でも1日中パソコンに向かって細かい資料を作成したり、下流工程の作業をミスがないか細かくチェックするような作業が発生します。
パソコンの前で長時間過ごすことが嫌な方や、プログラミングをバリバリやりたい方には厳しいかもしれません。
官庁系SIerエンジニアの将来性
気になる官庁系SIerエンジニアの将来性について解説します。
セキュリティが厳しい分立場は守られやすい
官庁系SIerの現場はセキュリティが厳しいです。そのため人の入れ替わりが激しいのは好ましくなく、実際長年勤めている人が多いです。
長年勤めた人はその現場に詳しくなるので、その現場では唯一無二の存在になれます。また日が浅い人も移動が少ないので、そのままその現場で重宝される存在になれる可能性が高いです。
業務知識の潰しは利きにくい
官庁以外の現場に移動しようと思っても、業務知識が特殊な分、潰しは利きにくいです。またプログラミングスキルもそこまで身に付かず、一番プログラミングをする機会があるとするなら現場で使用する便利ツールの開発などです。
メインのシステム開発ではあまりスキルは身に付かないので、その点はネックです。
官庁系SIerエンジニアのまとめ
官庁系SIerはSIerの中でも特に地味な要素が多く、向き不向きが分かれるかと思います。将来性に関しては仕事自体は急にはなくならないと考えられますが、潰しは利きません。
長く勤めて慣れれば業務的にはSIerの中では比較的楽かと思いますが、潰しの利く業務知識を身に付けたい、プログラミングスキルを磨きたい、ということであれば他の仕事も視野に入れた方が良いかもしれません。
現在SIerに悪い印象を持っているわけではなく、一部のIT評論家のように目の敵にしているわけではありません。またSIerはダメだ、WEB系が良い、と思っているわけでもありません。スキルが低くても入社しやすい、WEB企業ほど業務をこなすための勉強が大変ではない、といったポジティブな面もあるんではないでしょうか。