クラウドサービスにはどういうものがある?IaaS, PaaS, SaaSの違い
ガートナージャパンの調査によると、2017年1月時点での日本国内のクラウドコンピューティングの採用率は16.9%となっています。この調査結果を見ると、それほどクラウド利用が伸びていないように見えますが、同時にオンプレミス型に比べて企業の投資意欲は非常に高いとの結果が得られています。
クラウドの採用が今後進展していくことが見込まれる中、重要なポイントの一つに「目的にあったクラウドサービスを選択する」ことがあります。クラウドサービスは大きく分けてSaaS, PaaS, IaaSの3種類があります。今回は目的にあったクラウドサービスを選択するにはどういう点に気をつけると良いのか、また選択するポイントは何かということについて掘り下げて行きます。
目次
そもそもクラウドとは
まずクラウドこんピューティングとはどういったものなのでしょうか。基本的なことですが、簡単に触れておきます。
クラウドでは、従来の物理サーバーを自社等に設置して利用するオンプレミス型と違い、インターネットを介してサービスを利用します。ブラウザなどを利用してサービス利用するケースも多く、PCやスマートフォン、タブレットなどデバイスを問わず利用できるケースもたくさんあります。オフィスだけでなく外出先や自宅でも同じようにサービスが利用できるということはとても便利なことですよね。
また、クラウドはオンプレミス型に比べて初期導入コストが安いというメリットもあります。物理サーバーなどの機器を購入する必要がないので当然ですが、導入する側にとっては大きなメリットです。加えて、自社でサーバー機器を置く必要がないのでメンテナンスコストとリスクの低減につながります。
加えて、全てインターネットを介したサービスという形態であるため、災害時などに復旧が早いというメリットがあります。サービスを提供する本体が別の場所にあるため、インターネット回線を復旧させるだけで良いためです。このため企業の事業継続性計画(BCP)の観点からも大きな意味があります。
このようにクラウドコンピューティングは、従来のオンプレミス型とは異なったいろいろなメリットがあり、需要が伸びています。
クラウドサービスの種類
先ほど少し触れたようにクラウドサービスには大きく分けてSaaS, PaaS, IaaSの3つがあります。これらは、それぞれどういった特徴があるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
SaaS
「Software as a Service」の略で、従来ソフトウェアとして提供されてきたものをインターネット経由のサービスとして提供するもの。例えば、Google Appsのようなものです。インターネットを介してPCやタブレットなど端末問わずにどこでも利用できるというメリットがあります。
PaaS
「Platform as a Service」の略で、ソフトウェアが動作するOS環境やデータベースといったプラットフォームをインターネットを介して提供するものです。利用者はこれを使って自由にニーズに合致した環境を構築することができます。Microsoft Azureなどが代表的なものとなります。
IaaS
「Infrastructure as a Service」の略で、利用者が仮想サーバーなど必要なスペックを設定して利用するためのフレームを提供します。OSなども利用者が導入するので、VMwareやHyper-Vなどの仮想環境に似ています。Google Compute Engine や Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)が代表的なものとなります。
このように一口にクラウドといっても大きく「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分けられます。これらの特色を理解して目的にあったサービスを選択することが大切です。
目的にあったクラウドサービスの選び方
では、目的にあったクラウドサービスとはどのように選択すれば良いのでしょうか。「SaaS」「PaaS」「IaaS」それぞれにオススメのケースとはどういったものであるか見ていきましょう。
まず、クラウドサービスを選択する際に重要なことは「クラウド化したいシステムの特性を理解すること」です。つまり、クラウド化したいシステムがどういったものかを理解することで、適切なクラウドサービスを選択するのです。システムをクラウド化するにあたって押さえておくべきポイントは、以下の3つです。
- カスタマイズが必要なシステムかどうか
- カスタマイズが必要であれば、どの程度か(アプリケーション、OS)
- パフォーマンスを要求するシステムかどうか
- インターネット回線が充実したものかどうか
これらを踏まえて、「SaaS」「PaaS」「IaaS」のそれぞれに向いているケースはどういったものがあるのか見てみましょう。ちなみにパフォーマンスを要求するシステムの場合は、オンプレミス型の方が向いていますので、クラウドにしないという選択もあります。
SaaSに向いているケースはカスタマイズはあまり出来ない
- メールなど決まった形のサービスをそのまま利用したい場合
- ファイルサーバなどカスタマイズがそれほど不要な場合
- PCやスマホなどさまざまなデバイスで同じように利用したい場合
PaaSに向いているケースは少しカスタマイズが出来る
- OSはカスタマイズせず、自社でプログラムなどの開発・利用する場合
- OSはカスタマイズせず、ソフトウェアなどを導入して自社用のサービスを提供したい場合
IaaSに向いているケースはフルカスタマイズが可能
- 自社で開発したシステムで自社プログラムを開発する場合
- 自社で開発した内製システムなどをクラウド化する場合
- OSについても高度なチューニングなどを行いたい場合
これら3つのクラウドサービスの特徴を踏まえて、簡単にサービスの選択方法を説明すると以下のようになります。
カスタマイズ
- ほとんど不要:SaaS
- ソフトウェアの部分で必要:PaaS
- OS部分からカスタマイズが必要(自社システムなど):IaaS
パフォーマンス
- あまり要求しない:SaaS, PaaS, IaaS
- 要求する:オンプレミス
インターネット回線
- あまり高速でない:オンプレミス
- 光ファイバーなどの高速回線:SaaS, PaaS, IaaS
このように、特に「カスタマイズの程度」「パフォーマンスの必要性」「インターネット回線の状況」によって選択すべきサービスの種類が大きく変わってくることに注意しましょう。
まとめ
クラウドサービスには大きく分けて「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つになります。今回は、これら3つのサービスがどういったもので、どのようなケースにおすすめなのか見てきました。
カスタマイズの必要性や、パフォーマンスを要求するシステムかどうか、回線が十分確保できるかどうかといったパラメータによって、どのクラウドサービスを選択すべきかは大きく変わってきます。ここでそれらを改めて簡単にまとめると以下のようになります。
SaaS
- カスタマイズがあまり必要ない場合
- インターネット経由でPC、スマートフォンなどいろいろなデバイスで使いたい場合
PaaS
- 独自プログラムなどある程度のカスタマイズが必要な場合
IaaS
- 自社システムなど独自カスタマイズが必要な場合
オンプレミス
- パフォーマンスを要求するシステムである場合
- インターネット回線があまり高速でない場合
国内企業でも調査によると今後のクラウド導入はさらに進んでいくことは確実です。クラウド導入を検討する際は、今回の記事を参考にして適切なサービスを選択するようにしましょう。