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フリーエンジニアのためのプロジェクトマネジメント教室 〜【第6回】ユーザ側のプロジェクトマネージャが意識すべきこと 〜

ReadではなくLead

ベンダ側のプロジェクトマネージャはユーザ側の企業から受注したプロジェクトを納期に合わせて、所定の品質で、受注金額の範囲内に収めることが目的となりますが、ユーザ側のプロジェクトマネージャの見る範囲はもう少し大きくなります。

ユーザ側のプロジェクトは、せっかく予算を獲得してこのプロジェクトを始めたわけですから、これが経営戦略に叶ったものであり、そしてこれがゴールを迎えた際にはプロジェクト開始前と比べて経営的に効果のあるものになっていないといけません。

日々、矢のように飛んでくるメールやチケットをReadするだけでその日が終わっていませんか?

しかし、あなたはこのプロジェクトが最終的に経営戦略に沿うように日々Leadしていかないといけません。
Readは人に任せてエスカレーションされた重要な課題・リスクに対して対応し、代わりに全体をLeadしていかないといけないのだということを意識してください。

全体をLeadするには?

プロジェクト全体をLeadしていくためのキーワードを挙げるとするならば、「際(きわ)をみる」ということでしょう。

これは「プロジェクトの際」「システムの際」「組織の際」「スコープの際」等、いろいろあります。

プロジェクトの際

「プロジェクトの際」でいうと、経営層あるいはプロジェクトオーナーとの情報の共有が挙げられます。
担当するプロジェクトの進捗(スケジュール)、コスト、品質の状況、見込みと課題・リスクとその対応策を共有し、意見交換をしていきます。

また担当するプロジェクトの周りには別のプロジェクトが走っていることも多くあります。
それらの状況について経営層、プロジェクトオーナーから情報を得ることも大切な仕事です。

連携する予定の他システムの進捗が遅れると自分の担当するシステムの進捗にも影響を与えますよね?

さらに経営環境の変化、例えば円高により自社の業績の悪化が懸念される場合などはプロジェクトの凍結や予算削減なども予想されますが、こういった情報についても敏感になっていないといけません。

システムの際

次に「システムの際」つまり関連するシステムとの連携、あるいはレガシーシステム(旧システム)とのデータ移行等について連携システムやレガシーシステムの担当部署や運用ベンダとの調整を行う必要があります。

彼らはプロジェクトメンバーではないため、モチベーションが全くありません。

そんな彼らに協力してもらうには、事前に、丁寧に、状況の説明をしたうえで、どのような役割を担ってもらうかを明確に提示する必要があります。

組織の際

そして「組織の際」、プロジェクトというのは同じ社内であっても様々な部署から参加しており、その関わり方も専任であったり、兼任であったりと様々です。

このようなメンバーは所属部署の指揮命令系統に従いながら、プロジェクト内の体制にも従わないといけません。

プロジェクトマネージャは社内メンバーのプロジェクト内の役割を明確にし、どのような役割なのかをきちんと理解してもらってください。

またベンダ等、社外の組織の協力も必要です。
社外の組織とは「契約」という行為が必要になってきます。

派遣、請負、準委任という法律用語の意味と違いと十分に理解してコントロールしてください。

スコープの際

最後に「スコープの際」、これは前述の「システムの際」と「組織の際」と密接な関りを持ちますが、このプロジェクトに必要なスコープを様々な分野の有識者の意見を聞きながら網羅していき、そのスコープに関わる作業を、適切な時期に、適切な組織(担当)が実施していくことを目指します。

よく「三遊間」「ポテンヒット」といわれるように、その作業を誰がいつやるのか決まっていなかったり、そもそもその作業が必要だってことを認識していなかった。

これはプロジェクトあるあるなのかもしれませんが、それが頻発するのはプロジェクトの失敗要因であり、プロジェクトマネージャの責任の一つになるでしょう。

要はプロジェクトメンバーが見落としがちでマネージャが拾ってあげないといけない場所が「際(きわ)」なんですね。

フリーエンジニアの立場でのプロジェクトマネジメント

最後になりますが、現在、私自身はフリーの立場ではありますが、上場企業のユーザ側のプロジェクトマネージャを務めています。

依頼する企業からするとITプロジェクトの専門家を外部から招へいするということは、そのプロジェクトは失敗が許されないプロジェクトということが多く、身の引き締まる思いです。

また、私の場合はある程度信頼していただき、正社員ではないのにプロジェクト内での多くの権限をいただきマネジメントを実施していますが、一般的にその組織の正社員でない場合はなかなか前述の調整作業を行うのは難しい部分も多く、上記のすべてをフリーのプロジェクトマネージャが行うのは現実的ではありません。

むしろ上記のような知識、経験をもちながら正社員をフォローしていくというケースや、マネジメントを正社員に対して教育して欲しいという要望もあります。

つまり依頼者から見ると、
「この人にプロジェクトを任せると、少なくとも大失敗をするようなことはない、しかもうちの社員を支援する、あるいは教育もしてくれる」
という期待を込めて私に発注していただいていると思っています。

ですので、フリーのプロジェクトマネージャが活躍してくために最も重要なのはあなたの知識、経験を背景にした総合的な「信頼」や「信用」だと思っています。

これまで6回にわたって掲載してきた「フリーエンジニアのためのプロジェクトマネジメント教室」いかがでしたでしょうか?
このコラムが一助となり、皆さんが信頼、信用されるプロジェクトマネージャに成長してくれると幸いです。

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